『ブルージャスミン』&『ウィズネイルと僕』@吉祥寺バウスシアター

見てきましたよ。(爆音&ライブ以外の、バウスの最終上映作だね。)

jazzには全然詳しくないけど、前に入門したいなと思ってマイルス・デイビスジョン・コルトレーンビル・エヴァンスの輸入CDを数枚買っていたことを思い出したから(開封していないのもあった)あるかな〜と思って探したんだけど、「ブルージャスミン」で主人公のジャネット(ケイト・ブランシェット)が夫と最初に出会った店でかかっていたという曲blue moon は入ってなかった…。まあウディ・アレンの映画を見た気分、適当にjazzのCDをかけながら、これを書きまするよ。

 

ブルージャスミン

幸せになるために見栄を張り続け、嘘を重ね続ける、イタすぎる女性、ジャスミン。観客の誰もが感情移入しない嫌な女であり、決して友達になりたくないタイプ。でも彼女は悪い人ではなく自分の幸せのためにとても純粋で正直に生きているだけだと思う。観客に余計な感傷や同情を抱かせないためにジャスミンの生まれ育ちなどにはほとんど言及されていないけど、里子ということなので、彼女の考え方は、彼女なりに力強く必死にこの世を生きていく手段として、選んだ価値観だったのではないだろうか。この映画、同性なら胸に痛みを感じずにはいられないと思う。同族嫌悪っていうか、この映画を少しでもイタいと感じたら、ジャスミンは自分なんだろう。普通に生活してる人はジャスミンの部分は出さないでいるだけで、実は持っている。目を背けたいのに見たい、怖いもの見たさというのだろうか。2時間弱、決して気持ちのいい話じゃないのに目が離せなかった。ケイト・ブランシェットの演技凄かった。40代女性の弱さ、したたかさ、欲望…。同じ嫌な女の顔でも、種類がものすごくたくさんあってぜんぶ細かく違ってて。目力がすげえ。恐ろしい顔…感情がいまにも弾けそうでぎりぎりのところで留めている顔…見ててずっと緊張状態だった。アカデミー主演女優賞とっただけのことはあるよ、さすがです。見終わって、どうもうしろめたい気分になるのは、人間のというか自分の業が白日の陽の下にさらけ出されたという感じがするからだろうか。どこで笑ってやろうかな、って身構えていたけど、見事にどこも笑えなかった!現在の破滅と過去の破滅を平行して描く(最初に過去の破滅を説明しきらずに、過去も現在も破滅に向かってストーリーが進んでいく)という巧みな脚本も、さすがだった。よりスリリングに感じるからね。映画の楽しみってストーリーだけじゃないんだよなあ、って思わせてくれる映画でもありつつ、ストーリーもちゃんと面白い。円熟の味、ウディ・アレンすごいっす。

 

「ウィズネイルと僕」

ええもん見たーっ!って感じ。友だちとのたあいもない時間は一瞬であり永遠なんだと教えてくれる。

萌えなんでしょうね。この関係性は。「僕」とウィズネイルの関係性は。きっとね。「友情」って肩肘張らないで生まれるものなんだな。ウィズネイルって自分に都合の悪い時は逃げたり、人に責任を押し付けたり、見栄っ張りだったり、いつも強がっているくせに実は怖がりだったり、つまりすごいひっどいやつなのに、とてつもなく魅力的なんですよね。やつと過ごした日々はそのどれもがひっどいものでひとつひとつは大したことのない小さなエピソードの積み重ねなのに、鮮烈に残る。「やつ」と「僕」が同じ場所に存在してた、ただそのことが「永遠」なんだね。半自伝的作品と語る監督、パンフによると、「仲間と苦しい憂鬱を分け合った時間は、その時は苦しさしかないけど、後から思い出すと、とても楽しい時間になったりすることがある」って。確かにそういうことはある。私は高校時代のバスケ部の経験なんかそういうものに当たるかも。

さんざんテキトーに生きて友情もテキトーだった(そういうふうに見えた)ウィズネイルとラストのウィズネイルの態度のギャップときたら。かっこいいですよ。雨でふたり傘さしてね。主人公を見送ったあと、シェイクスピア劇の台詞をつぶやくんですよ。

いやあ、よい映画を見ました。(モンティがらみのシーン面白すぎた。リチャード・グリフィスかわいい…。)

 

 

映画を見てる最中は理解できなかったけど、パンフ読んだ後の理解によると、ウィズネイルと僕が出会ってから別れるまでは10年間。わたしがバウスと出会ってから別れるまでもほぼ10年くらいだなあ、とふと、レイトショー後の閑散としたサンロード商店街を歩きながら、思ったのでした。好きな映画館がなくなる、というのは近年いくつかあったけど、そのどれもが若い自分にとっては大切な友人のようなものだったのかなあ、と。父でもなく母でもなく友人。特にバウス・シアターは特別な存在だった。(だから、こうして何度も書くし、閉館を前に通い詰めてしまう。)

 

レイトショーが終わってから、映画の余韻に浸りながら、シャッターが締まって路上ライブやってる人や自分の作品を売ってる人らがちらほらいるサンロード商店街を吉祥寺駅まで歩くのが、たまらなく好きだったなあ。それがなくなるかと思うとさみしいよ。